夜中にトイレに行くのは億劫なもの。寒い冬はとりわけ勘弁してほしいことである。
今回は大切な睡眠のお話。
夜に寝付けない、眠りが浅い、途中で何度も目が覚めるなどの睡眠障害の際、安易に睡眠薬を飲んではいけないパターンのものがある。それは、排尿障害が潜んでいるケースである。
高齢になると、特にトイレが近くなりがちである。トイレが理由で何度も目が覚めるケースにおいて、睡眠薬を服用することは、大変危険なことになるのである。
脳内バトルが起こるのだ。
つまり、こういうことである。膀胱は脳へ「起きろ起きろ、トイレへ行け」と信号を出す。一方、睡眠薬は強制的に脳に働き眠りをいざなう。「眠れ、眠れ」と。すなわち、「眠れ眠れ」と、「起きろ起きろ」がバトルを繰り広げるのだ。そして、心身は大変消耗するのである。
絵: モリ
そういうケースの場合は、もちろん、排尿障害への対策や治療を優先しなくてはならない。夜間の水分摂取を極力控え、そして就寝前には尿を絞り出してから休む。トイレが原因で中途覚醒が起こっていた場合、うまくするとぐっすり朝まで眠れるはずである。
それでも、夜間にトイレへ起きてしまう場合は、排尿頻度が正常になるようなお薬を試す。
西洋薬では、抗コリン薬、β2受容体刺激薬、β3受容体刺激薬、平滑筋弛緩薬などがあり、漢方薬では、八味地黄丸、牛車腎気丸や清心連子飲などがある。
排尿問題が改善しても眠れない、中途覚醒が繰り返される場合には睡眠薬も視野に入れて再検討です。最近では、依存性の少ないタイプの睡眠薬も登場しています。
かかりつけ医の先生とよく相談して治療を進めてください。